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CAR(chimeric antigen receptor)-T療法

2019.7 免疫療法

今回はちょっと趣旨を変えて、トレンディーな話題を。この度、保険収載された「免疫療法」であるCAR(chimeric antigen receptor)-T療法について。

実は、先日中国の研究機関と共同研究並び顧問の契約をしたのだが、その時あちらの研究者(中国人だけどアメリカなどの研究室で実績のある方ばかり。)の発表が気になったのだ。どこかは後で。

さて、CAR-Tだ。先ず、キメラ(chimera)とは一つの細胞内に複数の遺伝子を含んだものの事を言う。CAR(キメラ抗原受容体)とは,抗体の抗原結合部位と,T細 胞活性化レセプター(TCR)の細胞内ドメインを遺伝子組み換え技術を用いて結合させたものだ。 そして、このCAR 遺伝子を、遺伝子導入技術によってT細胞に導入したものが CAR-T細胞だ。

CARを導入されたT細胞は標的抗原を認識すると、直接TCR 細胞内ドメインが刺激される為、標的抗原に対して強力で特異的な免疫反応が起こる。

そもそも、なぜCARの開発が進められたかと言うと、一般的に、体外で免疫細胞を培養し体内に戻す治療は行われているが、免疫細胞としての反応はもう一つの場合が多い。一方、強力な免疫細胞として腫瘍関連抗原(TAA : tumor-associated antigens)に特異的なT細 胞がある。この TAA特異的T細胞を増幅し、患者体内に戻す事は以前から行われていた。しかしながら特異的T細胞は極めて少数のため製剤とするのは難しい。また、TAAは免疫原性が低い上に、腫 瘍細胞はHLA(白血球抗原)分子の発現が低い為、T細胞の活性化 や増殖が阻害されやすい。このような弱点を解決するため、1980年代半ばから、癌抗原特異的抗体とT細胞を人工的に組み合わせたキメラ抗原受容体の開発が進められていたのだ。