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不老不死についてⅡ

2021.6 その他

前回は主にサーチュイン(sirtuin)が老化のコントロールをしていると書いた。実はmTORやAMPKという他の長寿遺伝子もあるのだが、取り敢えずサーチュインの活性化について。

サーチュインの中で特に重要なSIR T1(サーティワン)を活性化させる物質がNAD(nicotinamide adenine dinucleotide:ニコチナミド・アデニン・ジヌクレオチド)だ。

NADは全身の臓器、組織に分布しており、生体内の NAD 量はその合成と消費のバランスによって調節されている。当初、補酵素としての NAD は 特に消費されるわけでもなく、その総量は安定していると考えられていた。しかし、実際には NAD の合成・分解は細胞内において常に行われている事がわかった。特に DNA 1本鎖損傷の修復酵素であるPARP(poly(ADP-ribose) polymerases)は、 DNA 1本鎖損傷の修復に、NAD を使った自己ポリADP リボシル化を行うことによって、大量の NAD を消費する。しかもこのDNA 1本鎖損傷は日常的に大量に発生する。細胞1つで1日になんと約 25 万箇所の DNA 1本鎖損傷が発生すると考えられている。

一般に加齢に伴い、NAD 量が減少することが知られており、このNAD量の低下が、臓器や組織の機能低下、ひいては老化に伴う疾患を起こしている。NAD量の低下は、NAD合成とNAD消費のバランスが崩れることによって起こる。