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がん治療の現状(2)

2017.11 がん治療

さて、「自然治癒派」についてだが、標準治療も含めて全く治療を否定するのは流石に論外だが、一理ある部分もあると思う。癌とは究極の生活習慣病である。癌遺伝子があるだけで癌になる訳ではない。後天的なイニシエーションが働いて発癌していくのである。

例えば、肺癌の遺伝子を持っている人が一日60本タバコを吸っていれば、まあ肺癌になるだろう。要するに身体が発癌しやすい状態になっているのだ。原因として、食習慣はもちろんだが、食品に含まれる抗生物質や防腐剤、シャンプーや化粧品などは発癌を惹起すると考えられている。最近お産の時に羊水が良い香りのする人が多いと言う。シャンプーや化粧品の影響らしい。これらは少なからず、皮膚吸収されているはずだからあり得ると思う。そして、吸収されているのは香料だけではないだろうとも想像がつく。

食品ももちろん、食品衛生法に定められて安全とされているものしか添加されていないはずだ。しかし、短期的には安全でも長期的に摂り続けるとどうかわからない。草食動物なら、牧草に撒かれていた農薬なども体内で濃縮される。そうはいっても、防腐剤を添加しないと食中毒の発生につながるし、抗生剤を使わないと、牛や鳥が病気にかかる。一般に出回っている食品からこれらを排除するのは現実的には難しいだろう。だからといって、良くない状況なのは間違いない。この辺りは欧米では近年関心が高く、アーユルヴェーダなど古来からの自然科学の研究をし、食事などの生活習慣を改めて治療すると言う「自然療法」(naturopathy)が盛んだ。代表格はシアトルのBastyr Universityだが、ここで講師をしていた人の話を聞くと、身の回りのものが食べられなくなる。「あそこのメーカーのなんとか言う歯磨きはエチレングリコールがどれだけ入っていてダメ!」「はちみつは、ドコソコの国のナントカいう銘柄以外は抗生物質が入っているからダメ!」みたいな話ばかりするのである。

少し話がずれたが、要するに癌は検査で捉えられている癌だけ見ていてはダメで、画像でまだ捉えられていない癌のことも考えないといけないのだ。癌が生えやすい体質を改善する必要がある。この点に関して一理あると思うのである。ただ、当たり前だが、すでに癌を発症している時点で、体質改善だけで治るケースは極々稀だ。治ったケースを見たこともあるが、それは例外で、これをアテにして治療を拒否するのは間違いだと思う。私自身も「患者よ癌と戦うな!」と言う意見の先生のもとに行って、手術の機会を逃した胃癌の患者さんを診たことがある。