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腸内細菌叢による世代間の情報伝達

2020.1 免疫療法

前回の続き。
母親のストレスが養育によって子供に伝達されるという話だが、その機序として、幼少期に与えられたストレスは、脳の神経回路の変化とともに、ストレスに対する腸の反応の鋭敏化をもたらすという。
そして幼少期のストレスが、腸や脳ばかりか、腸内細菌叢にも深甚な影響を及ぼすことが明らかになった。
しかしこの事だけなら腸内細菌叢やそれが生成する代謝物質の変化が関係するのは、母親のぞんざいな養育による「心理的な」影響の為であり、世代間で母親が受けたストレスを引き継ぐのとは異なる。
このことに加えて近年、母親が受けたストレスが、その子供の腸内細菌叢の構成を変えることが解った。そして腸内細菌叢が脳にこれらの情報を送りこれらの記憶を伝達していたと言うのだ。
つまり、腸内細菌叢が世代間の情報伝達を介助していたのだ。
しかし疑問として起こるのは、胎児の段階では、腸内にほとんど腸内細菌が宿っていない。ではどうやって、母親の腸内細菌叢が子供に伝わるのだろうか?

実はストレスによって変化するのは母親の腸内細菌叢だけではなく、腟内の細菌叢の構成も変化することがわかった。それが新生児の腸内細菌叢の構成に多大な影響を及ぼすというのだ。
新生児の腸内細菌叢の構成は、一番最初に母親の腟内細菌叢が影響する。つまり膣内において新生児は最初の細菌叢に晒され、これがその後の腸内細菌叢構成の基になるというのだ。つまり、ストレスを受けたマウスの母親は、その母親と同じ腸内細菌叢構成を持つ子を宿す。 このストレス効果は、新生児の腸内細菌叢と脳の神経回路の複雑な構造が、恒久的にプログラミングされるきわめて重要な時期に起こるので、その後の脳の反応などにも大きな影響を与える。