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がん治療の現状(1)

2017.10 がん治療

コラムを依頼された。どうやら医療関係のネタ話が豊富と思われているらしい。色々と興味深い話はあるが、最初は少々まともな話からしていこうと思う。

まず、医師としての私の専門分野は「癌」と「医療情報」である。大学で肝臓癌に電極を刺して焼灼する「経皮的マイクロウエーブ焼灼術」という治療法の開発に携わっていた。学会内で各大学が提案してくる治療法の中から、優位性が認められ、保険収載されるまでをつぶさに経験してきた。近年は、名人芸の必要なこの治療より、誰でも広範囲を焼灼できる「ラジオ波」が主流になっている。

患者さんが亡くなって、その病理組織を得るために病理学教室が担当する「病理解剖」に潜り込んで必要部位の組織(癌と正常部の境界は特に大事)を優先的に切り出してくるのも臨床研究では大事な仕事だ。もちろん、病理の知識が必要なだけでなく、病理教室の先生方とも仲良くしてないと、勝手に検体を採らせてもらうことは出来ない。この辺は、大学などで「科」の壁を実感されてる方にはわかっていただけると思う。

そんなわけで数千例の肝臓癌患者さんを診てきた。一旦「完治」したとしても多くの方が、いずれ再発して最後は亡くなってしまう。長年入退院を繰り返し、顔見知りの患者さんが亡くなるのは正直つらい。検体が欲しい症例の患者さんが、危篤と聞いてから亡くなるのを何日か待ち構えていて、いざとなると解剖室(ゼク部屋)へ飛んでいかなくてはならない。病理解剖で臓器が切り出されてしまうと、お目当の部位が入手できないからだ。凍結保存用の液体窒素の入ったポットを持ってゼク部屋へ向かうのはなんとも気の重い作業だった。大学では主治医は出向など出入りが激しいので、一人の患者さんと長年付き合うのは、私のような治療グループの医師達だ。

 

当時は、目の前の業務をこなすので精一杯で、「これが今の医学の限界だ」ぐらいにしか思っていなかった。ただ、なぜ再発する人とそうでない人がいるのか? そもそも、なぜ発癌するのか?

 

肝臓癌については、C型肝炎の発見でなんとなく納得してしまっていたし、当時はp53などの癌抑制遺伝子などが発見され、遺伝子レベルでの発癌機序の解明が進むと思われていた。まあ、20年以上前の話だけど。