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がんと腸内細菌叢(腸内フローラ)

2025.10 その他

 以前癌治療と抗生物質について触れた。今回は、「腸内フローラ」も絡めた関係を最新の知見を含めて考えてみたい。

近年、癌組織内に細菌が恒常的に存在することが示されている。細菌は腫瘍表面だけではなく、癌細胞内や腫瘍随伴免疫細胞内にも検出されることが多い。そして、腫瘍種ごとに構成が異なる「腫瘍内マイクロバイオータ」という概念が受け入れられつつある。これらの細菌は炎症や代謝、免疫応答、薬剤感受性に影響するとされる。

細菌の主な侵入経路は呼吸器が多いと思われる。一般的には感染症の多くは呼吸器から侵入する印象がある。いわゆる「風邪」などは最も日常的な感染症で、よく聞くところの「空気感染」「飛沫感染」などで感染が広がるからだ。ところが、腫瘍内細菌は「こんなところにいるはずのない菌」と表現されたりする。なんと、その主な供給源は口腔内と腸内の細菌叢だ。口腔からの一過性菌血症や腸管バリア破綻を介して腫瘍に到達する経路が想定されている。確かに腫瘍内は低酸素・酸性・栄養枯渇など特殊環境が支配的で、嫌気性菌や通性嫌気性菌にとっては居心地の良い環境だ。